東北大学病院 放射線治療科

患者様へ

放射線治療中の副作用に関して

放射線治療を受けられる皆様へ

これから1週間から2か月間に渡る放射線治療とのお付き合いが始まります。当科の担当医・看護師・技師、更に主治医と一緒に行なっていくことになります。色々アドバイスも貰えると思いますが、このホームページでも簡単に症状別の日常生活アドバイスを載せております。放射線の副作用は基本的に放射線が当たっている所へ出てきます。が、それはしるしを付けてある部分と必ずしも一致はしません。担当医にどこにどんな副作用が出てきやすいか話を聞きながら行なって行きましょう。薬や市販品の名前は分かりやすいようにあえて商品名で表示しています、利益相反はございません。

症状別のアドバイス

放射線は皮膚を通過して体の中に届きますので、放射線治療を受けている方なら誰でも皮膚炎は起こりえます。しるしを書いてある体の前面だけでなく、当て方によって背中などにも出てくることがあります。 基本的には泡立てた石鹸で優しく洗い、ポンポンと当てるようにして水分を拭きとって下さい。かゆみのある時などは保冷剤をタオルに包んで冷やしてあげると、楽になることが多いです(冷やすことについては賛否両論ございますが、掻く・叩く・つねるなどよりずっと良いです)。症状に応じて担当医から軟膏などを処方される場合があります。軟膏、クリーム、ローションといった種類もありますので希望がありましたらお伝え下さい。軟膏使用時の注意点としましては照射のすぐ前には塗らないようにして下さい。照射後や寝る前等に塗って頂きます。 襟の部分やベルトを占めている部分など擦れる部分はひどくなることがありますので早めにご相談下さい。皮膚炎がひどくなることの多い頭頸部(首の周りです)、乳房、お尻・陰部について少し詳しく記載します。

乳房へ放射線治療を受けられている方

皮膚が少し赤くなる程度はほぼ全員に、ひどい時には皮が剥ける場合もあります。特に脇の下、乳房の大きい方では乳房と皮膚の擦れるところに強く出る場合が多いようです。

服装:治療中、治療終了後しばらくはブラジャーはお勧めしません。キャミソールのような下着とシャツが一体となったようなゆったりと着られるもの、綿素材インナーなどをお勧めします。仕事をしている等の理由でブラジャーが必要な方は、ノンワイヤーの肌に優しいものや、ワンサイズ上のブラジャーにして間にガーゼを入れたりその方に応じて考えますので看護師にご相談下さい。

お風呂:肌は非常にデリケートになり、後半は皮脂も減りカサカサになる方もいらっしゃいます。泡立てた石鹸で優しく洗って、体を拭く時はポンポンと押さえるように拭いて下さい。石鹸は乾燥肌・敏感肌用のものをお勧めします。赤ちゃん用の石鹸はなるべく止めましょう(カサカサがひどくなってしまう場合があります)。以下に聞かれればお勧めすることが多い石鹸をご紹介します。

  • Curelシリーズ・・・ボディウォッシュやローション/クリームは一般薬局でも購入できることが多いです。
  • リモイスクレンズ・・・保湿も出来る洗浄クリームです。必ずしも流水で洗い流す必要がありませんので、毎日の入浴が困難な方にも適します。院内の薬店にもございます
  • セキューラシリーズ・・・CLはスプレー式で泡立てる必要がありません。セキューラCLで洗いセキューラMLで保湿します。院内の薬店にもございます。

赤くなってきた、痒くなってきた:対処法は前述の通りです。

終わった後:皮膚の炎症は大体2週間~1ヵ月で良くなってきますが、終わった直後1週間くらいは逆にひどくなる方もいらっしゃいますので注意し、ひどくなる場合はご相談下さい。発赤が消退した後の日焼けの後のような色素沈着はしばらく残ります(2ヵ月~年単位)。またやはり日焼けの後と同じように皮がむけてくることもございますが、心配ありません。強くこすらないようにして自然に落ちるのを待って下さい
温泉やプールは皮膚炎が落ち着くまで、少なくとも1ヵ月は控えましょう。腋の脱毛もしばらくは控えて下さい。

頭頸部(首の周りです)へ放射線治療を受けられている方

首の周りへ放射線治療を受けられている方は、皮膚炎が強く出る場合が多くなります。
まず衣服についてですが、襟のあるものなど首の皮膚が擦れるような服裝は止め、首周りのゆったりした服装をお勧めします。症状に応じて軟膏などもお出ししますし、痛みの程度で鎮痛薬を出す場合もあります。首の皮膚がむけてきてしまったら、院内の薬店で売っているメピレックストランスファーなどで保護します。擦れる痛みも軽減してくれますし、浸出液も吸収してくれ、照射毎に皮膚からはがす痛みもほとんど余りありません。首全体にかけている方はメピレックストランスファーをぐるりと巻いて、伸縮ネット包帯などでずれないようにします。大変な治療になりますが、頑張って行きましょう。

お尻・陰部へ放射線治療を受けられている方

こちらに放射線をかけている方で問題になることが多いのが、汚物等による汚れです。
治療の副作用として同時に下痢を伴うこともあり、更に汚れやすくなります。排便後は拭き残しもよくありませんが、ごしごし拭きすぎるのもよくありません。なるべく水勢弱のウォシュレットを使い、拭く時は押さえるように拭きます。その後に院内の薬店でも売っているサニーナ塗布したりします。最後に処方された軟膏があればそちらを塗布し、おむつを使用している場合など汚れやすい場合にはセキューラPOやワセリンなどを塗布します。陰部は特にデリケートで擦れやすい部分です、辛くなることもありますが治療が終わると改善することがほとんどですので頑張っていきましょう。

頭や首に放射線がかかっている方は、放射線開始後2-3週間後くらいに髪が抜けてきます。放射線治療が終了した後に抜ける場合もあります。徐々に抜けることよりも、急に沢山の髪の毛が抜け出すことが多いようです。一般的には3-6か月かけて髪の毛は生えてきますが、当たる放射線の量によっては中々生えてこない場合もございます。放射線治療中のシャンプーはCurelやプフレ頭皮ケア用シャンプー等の低刺激のものが安心です。治療中は頭皮にも負担がかかっていますので頭皮のマッサージや育毛剤は控え、タオルも頭皮をこすらないように水分を拭きとって下さい。残った髪を無理に抜くことも毛根が傷つくので控えましょう。頭皮の皮膚炎が落ち着きましたら頭皮のマッサージなどは行なっても構いません。髪が生えてこない間も頭皮の洗浄は続けましょう。

また頭皮もほかの皮膚と同様にかゆみやひりひり感が出てくることがあり、冷却を勧めたり、ローションを処方することもあります。

頭に放射線をかけていないにも関わらず髪が抜けてきた場合は、化学療法やストレスによる影響などが考えられます。

髪が抜けている間はキャップ(綿素材で縫い目の無いものがお勧めです)、バンダナ、ウィッグなどを使って頂くことが多いです。医療用かつらを相談したい際は仙台では藤崎本館のハイネットさんや、仙台駅近くのSVENSONさんがあります。男性でも職場に復帰する時などに使われる方がいらっしゃいます。


パンフレットも色々ご用意しています。

口の中に放射線が当たると、唾液が粘っこくなりやがて出なくなり口の中が乾燥してくる、そして口の中が口内炎/粘膜炎により痛みが生じてくる、味覚が変わる、声がかすれるなどの変化が出てきます(口内炎は化学療法の副作用なんかで出てくる場合もあります)。鎮痛薬が必要となる場合も多く、使っても食事量が落ちてしまうこともあります。辛いものや果物などはしみやすく、固いものは粘膜を傷つけやすいので注意して下さい。タバコやアルコールを含め、こうした粘膜の刺激は口内炎/粘膜炎をひどくします。食事量が落ちてきてしまったら胃瘻や経管などから積極的に栄養を摂取します。その方が治療後半になっても体力が落ちず、また副作用からの回復も早く、治療効果が高まります。

注意!:呼吸が苦しく、ヒューヒュー息をしなければならなくなった時はすぐに医師や看護師にお伝え下さい。粘膜の浮腫により気道が狭くなっている可能性があります。

歯ブラシ・歯磨きもとても重要で、歯科の先生のアドバイスを参考にして下さい。口の中のことですので、歯科や担当医からうがい薬を処方されると思います。用法を参考に積極的にうがいをして下さい。うがいによって期待される効果は、口の中の細菌を整え口内炎を悪化させないようにする、粘膜保護、抗炎症作用、口腔内の乾燥による虫歯を防ぐ、ひどい時には表面麻酔によって口の中の感覚をにぶらせ痛みを軽減させることもあります。2-3日以内に使いきれるのであれば、ペットボトル等で作り置きして使っても構いません。
口の中の痛みは照射終了後2週間~1か月で落ち着いて来ます。味覚は4か月~1年程度、唾液は数ヶ月~数年、完全に戻らない方もいらっしゃいます。治療後の口の中の乾燥対策としては、市販薬ではバトラージェルスプレーやオーラルバランスなどでの保湿、処方薬ではサリベートという噴霧剤やサラジェンという唾液を出しやすくするものがあります。結局水が一番という方もいらっしゃいます。

婦人科の病気などで放射線がお腹に多く当たる人は、副作用として治療開始後2-3週くらいから下痢が生じてきます。放射線による下痢の場合は、感染性腸炎による下痢と対応が異なります。ノロウイルスのように人にうつったりはしませんし、お薬(ロペラミドなど)を積極的に使います。もちろん下剤使用中の方は中止して頂き、OS-1などで水分も積極的にとって下さい。止痢薬を使っても下痢が収まらず脱水がひどい時には、点滴なども行ないながら治療の完遂を目指します。コーヒーや食物繊維の多いものは下痢をひどくすることがあるので注意です。辛い食べ物はお尻が荒れだした時にヒリヒリしやすくなりますので避けた方が無難でしょう(こちらは皮膚が赤くなってきた・痒くなってきた・ヒリヒリしてきたの項もご参照下さい)。これらも治療が終わると1~2週間程度で治まることがほとんどです。

※照射中は部屋から誰も居なくなりますがモニターで見ていますので、何か問題があるときには手をあげたりしてお知らせ下さい。

放射線宿酔などと呼ばれますが、治療の最初の頃このような気持ちが悪くなる、吐き気といった症状が出る方がいらっしゃいます。ゆっくり休んで頂き症状に応じて制吐薬などをお出しします。また人によっては放射線が終わるととにかくだるい、とにかく眠いなどを訴える方もいらっしゃいます。なんともないという方が多いですが、個人差のある所です。

広い範囲に放射線が当たる全身照射などでは気持ち悪くなる頻度は高いです。また頭に放射線をかけている方も気持ち悪さや頭痛などが出てくることがあります。これらも同様に放射線治療が終了すると次第に落ち着いてきます。

注意!:頭に放射線をかけている方で、何度も吐く・なんだか反応が鈍くなったなどの症状が出た時は、すぐに医師や看護師にお伝え下さい。

医療用麻薬は痛み止めとして処方致しますが、大きく分けて「がんやその転移による痛みを和らげる」、「がんに対する放射線治療に伴う痛みを和らげる」目的で使われます。

「がんに対する放射線治療に伴う痛みを和らげる」というのは、頭頸部がんや食道がんの放射線治療では、食べ物が痛くて飲み込めないほどの粘膜炎/食道炎、首の皮がむけてしまう程の皮膚炎という副作用が出てきます。このような痛みに対して医療用麻薬は積極的に使われています。NSAIDsなどと呼ばれる一般的な痛み止めだけでは追いつかなかったり、むしろ腎臓などに負担がかかるため使われない場合もあります。ただし医療用麻薬も多少の副作用があり、代表的なものとしては吐き気・気持ち悪さ、便秘があります。吐き気・気持ち悪さは始めたばかりの頃などに見られることがあり、無理せず、医療用麻薬が嫌いになってしまう前に主治医に相談しましょう。また便秘の副作用は多くの方に見られます。これも緩下剤などお出ししますので主治医に相談して下さい。麻薬と聞くと麻薬中毒などを想像してしまいますが、痛みがあって医師が適切に処方すれば、その頻度は500人に1人以下と言われており安全に使用することができます。ただ自宅では子供やペットが勝手に飲んでしまわないようにご注意下さい。

「がんに対する放射線治療に伴う痛みを和らげる」目的で医療用麻薬を使っていた場合は放射線治療終了後、たいてい数週間で痛み止めが必要無くなります。また「がんやその転移による痛みを和らげる」目的で使っていた方も、痛い所に放射線治療を行なっていた場合は治療中~終了後数週間で痛み止めを減らす/無くすことが出来たりします。なんだか日中もやたらと眠いなどという時は減らすサインです。よく分からない場合などは主治医に相談しましょう。

*本文で登場する院内薬店は、こちらのマップを参照下さい