東北大学病院 放射線治療科

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マイクロセレクトロンHDR(放射線治療腔内照射装置)

マイクロセレクトロンHDR

千代田テクノル (http://www.innervision.co.jp/expo/radiotherapy/c-technol/mhdr/index.html)

マイクロセレクトロンHDRは、密封小線源治療を行う装置です(図1)。この装置はElekta社のIr-192放射線源を使用した高線量率リモートアフターローディングシステムであり,術者(放射線治療医)の被ばくも全くありません。


図1:マイクロセレクトロンHDR本体

代表的な適応疾患に子宮がんがあります。はじめに術者がアプリケーターと呼ばれる器具を挿入します(図3左)。その状態でCT画像を撮像します。同室内にラージボアCT(Aquilion™ LB: キャノンメディカルシステムズ(図2)を導入しているため、別室に移動することなく画像を取得する事が可能です。これを治療計画装置(Oncentra Brachy, Elekta)に転送します。コンピューター上で、このアプリケーターの中で、線源をどの位置で、どの程度の時間停滞させるかを設定します。線量分布図ができ、どの点に何Gy処方するかを決定します。その後にこのマイクロセレクトロン内に収納されている密封小線源Ir192が遠隔操作で移動してきて、Ir192から放出されるガンマ線によって一定時間照射されます。照射終了後にアプリケーターを抜去し、出血がない事を確認して終了になります。週1-2回のペースで行います。外部照射と併用して行う事が一般的ですが、この治療単独で行う事もあります(患者さんによって治療方針は変わりますので、治療の詳細なスケジュールに関しては、放射線治療医にご確認ください)。

子宮頸がん(子宮・膣内にタンデム・オボイドまたはタンデムシリンダーというアプリケーターを挿入します)と子宮体癌術後膣断端再発(膣内にシリンダーというアプリケーターを挿入します)の線量分布図です(図3右)。CT画像を用いて三次元的に線量分布図を作成することが可能なため、病巣のみならず周囲正常臓器の被曝線量を評価することが可能です。アプリケーター周囲の病変部に集中的に高線量の放射線を当てる事が可能であり、少し離れた周囲の正常臓器への線量を少なくできるのも利点です。


図2:同室内ラージボアCT


図3:アプリケーターと子宮頸がんと子宮体癌術後膣断端再発の線量分布図

体積が大きい腫瘍に対し、腔内照射アプリケーターだけでは放射線の当たりかたの不十分な領域ができる可能性があります。そこで外陰あるいは腟の中から、放射線の当たりかたが不十分な場所に細い組織内照射用アプリケーターを刺入することで、腫瘍の形状に合わせた線量分布をより作りやすくなります(図4、組織内照射併用腔内照射)。これにより局所制御向上ならびに放射線治療後の晩期有害事象軽減に繋がります。針を刺す手技になりますので、十分な鎮痛・鎮静を行います。


図4:子宮頸がんによる線量分布図(通常の腔内照射と比較して、
正常組織への線量を少なくしながら腫瘍に対して必要な線量を投与する事が可能です)

さらに腫瘍がかなり大きく、アプリケーターの刺入/抜去を繰り返す事が患者さんにとって負担になると考慮した場合には、固定用のテンプレート(The Martinez Universal Perineal Interstitial Template, Elekta社)用いて一定期間アプリケーター針を留置させたまま組織内照射を行う場合もあります(図5)。

実際の治療効果ですが、一般的に子宮頸癌(扁平上皮癌)は放射線治療の感受性があり、RALS治療により良好な局所制御を得ることが可能です(図6)


図5:子宮頸がんによるMUPITテンプレートを用いた線量分布図(一定期間の留置が
必要になりますが、より腫瘍に対して集中的に治療する事が可能です)


図6:子宮頸癌に対するRALS治療の効果(腫瘍が大きい場合や横に伸びている場合でも
外照射とRALS治療を併用する事で、赤丸で示す通り良好な局所制御を期待できます)