東北大学病院 放射線治療科

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前立腺癌 密封小線源放射線療法

前立腺癌 密封小線源放射線療法

当院では、限局した前立腺癌(低リスク群)の患者さんの治療法の選択肢のひとつとして、放射線同位元素(I125)を密封した小線源(図1)を永久刺入する放射線療法を行っております。


図1:I125密封小線源の模式図

この治療法は飛程が短く、線量率の低い放射線物質を経会陰的に、直腸においた超音波装置からの画像を60~80個を永久刺入します(図2~3)。


図2:刺入時の風景

※超音波画像(TRUS)をガイドに前立腺内の適切な位置に密封小線源を置いてきます。


図3:小線源刺入後の骨盤レントゲン写真

※骨盤底部に5mm程度の密封小線源が70個程度刺入されています。

図4はこの治療による線量分布図です。全身麻酔下で約2時間程度で終わる手技なので、比較的簡便です。当院では5泊6日の入院加療としています。隔離されるのは、1日のみです。抗凝固療法を行っている患者さんでも1週間程度の休薬で、安全にできる治療法です。海外からの長期予後報告では、低リスク群では、小線源療法単独で5年生化学的非再発率90%と報告されています。


図4:刺入後のCTにおける線量分布図

副作用としては、治療直後は稀に刺入刺激による前立腺浮腫の為に一時的に尿閉となりますが、1週間程度で回復します。その他には軽度血尿のみで退院となります。しかし、この放射線物質は、半減期が約2ヶ月と長いために、急性期の放射線障害が2~3週間から始まり、3ヶ月目をピークとして、6ヶ月程度まで続くという特徴があります。そのため、頻尿や排尿困難がしばらく持続します。しかし、これらは放射線が減衰すると改善してきます。 晩期障害として、約2%程度で放射線直腸炎による出血を起こすことが報告されていますが、当施設ではこれまで200例以上の経験がありますが、わずかにお一人のみの発生でした。

ご紹介いただく場合は、はじめは当院泌尿器科を受診してください。他院にて前立腺生検を施行済みの場合は、そのプレパラートを持参させてください。また画像診断を行っている場合も併せてお持ちください。泌尿器科で再度リスク評価を行ってから、小線源治療適応症例では放射線治療科に紹介となり、合同で加療を行います。低リスク群でも、前立腺肥大が強い場合(>40ml)には、縮小させるべく半年程度のホルモン療法を行う場合もあります。