東北大学病院 放射線診断科

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留学

ドイツ、ベルリンのフンボルト大学シャリテ病院( Charite Universitatsmedizin Berlin)に留学中です

高瀬 圭(助教)

私は現在、ドイツ、ベルリンのフンボルト大学シャリテ病院( Charite Universitatsmedizin Berlin)に留学中です。

ベルリンは350万人の人口を有するドイツの首都ですが、広大な森と湖があり、まったくゴミゴミした感じのない綺麗な町です。東西ドイツ統一後16年が経ち、たくさんの新しい建物も建っています。
その中心街にあるシャリテ病院はヨーロッパ最大規模の病院で、ミッテ(中央)キャンパス、ウィルヒョウキャンパス、ベンジャミンフランクリンキャンパス、ベルリンブーフの4つのキャンパスがあり、3500ベッドを有しています。コッホ、ウィルヒョウ等の人材を輩出し、北里柴三郎、森鴎外も学んだ歴史ある大学です。

私はミッテキャンパスの放射線科にvisiting scientistとして所属しています。日常業務は朝7時30分からのカンファレンスに始まり、午後4時で通常業務は終了ですが、シフト勤務性で夕方からの検査も施行されています。また、私の専門の血管系放射線診断では血管外科とのカンファレンスは火曜日の4時から行われます。フンボルト大学とベルリン自由大学の医学部は統一され多数の学生がいますが、学生講義も夕方の時間を利用して行われたりします。

3次元画像処理や血管造影の画質へのこだわりといった細かい点では我々日本の放射線科が優れていると感じる反面、ベルリン市内にあるシェーリング社等の企業との共同プロジェクトでの特殊造影剤の基礎的および臨床的研究、企業からの研究者の受け入れ、MRIリサーチハウス等研究面では恵まれており、ウィルヒョウキャンパスでの多数の肝移植症例や心臓センター等の臨床上の特色もあります。日本よりは明らかに恵まれたスタッフ数と1台あたりの撮影件数が日本よりは少ないことから、かなり丁寧な読影を勤務時間内に比較的余裕を持ってしていると感じます。

CT、MRIの検査は造影時には全例放射線科医が立会い、血管確保と確認から撮影範囲の設定まで行っています。特に心臓MRIではある程度以上の撮影は医師が直接行っています。MDCT導入時に私が石巻赤十字病院で行っていたスタイルで、何か懐かしいものを感じます。ドイツでの医師免許は残念ながら持っていないので、公式のレポートは作成できませんが(あたりまえながらドイツ語ですしーー)、検査に参加しているとこうした丁寧な検査法と読影の重要さを再認識させられます。今は、東北大に導入予定の3TMRIの使用法を勉強すべく主にMRI室で心臓MRIと血液プール造影剤でのMRAを研修しています。

一般撮影、超音波、ミエログラフィー等を含め幅広い領域をカバーし、各臓器に専門の放射線科医がいるにもかかわらず全員が6週間の有給休暇をすべてとり、さらに業績に応じて研究フリータイムも与えられています。それにもかかわらず、ドイツの医師たちは大規模なストライキを長期間にわたり行っており、積極的に労働条件を改善しようとしており、市民からも概ね支持されているようです。
医学教育の参考に学生の講義に参加すると、医学教育システムも日本同様改定途上で、チュートリアル教育の比率を高めようとしています。

ヨーロッパにいる地の利を利用して、他大学の放射線科や医療機器工場を訪問したり、私と同じアダムキウイッツ動脈の研究をしているオランダのマーストリヒト大学の先生と交流してデータをもらい、日本から持参したワークステーションで処理をしたりもしています。異文化の国々が集うヨーロッパを歩くのは楽しく、特に今年はワールドカップでベルリンにもラテン系の言語が飛び交っています。自分の研修のみならず、今後の若手のためのヨーロッパの大学との関係作りや、今後の医学教育システムや労働環境の改善の参考にもしたいと思っています。

医師同士の会話は英語で事足りますが、看護師、放射線技師は旧東ベルリン側にあるシャリテ病院内ではほとんど英語を話さず、そういった職場でのドイツ語環境に少しでも対応すべく語学学校にも通っています。大学生時代を思い出しながら世界各地からの10代後半から30代位までの若い学生と一緒に机を並べて勉強しています。最低気温がマイナス25度にもなった寒い冬も終わって、夏は夜の10時頃まで明るい日々です。仕事帰りにオペラにいっても中休み時間には太陽が明るく輝いています。

ヨーロッパで歴史と伝統を感じながらの留学生活で、たいへん充実した日々を送っています。これからの若い先生にも、それぞれの興味に応じた留学先を選んでもらい、国際的な研究協力、人材交流を増やすべく努力したいと思います。

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