東北大学病院 放射線診断科

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核医学検査の特徴

 核医学検査は、放射性医薬品を体内に投与して専用のカメラで画像化する検査です。CTやMRIが行われるようになった時代よりもずっと前から行われている歴史の長い検査です。主に静脈から放射性医薬品を投与し、特定の臓器や腫瘍に分布するのを待って撮影を行います。薬品によって撮影のタイミング、回数が異なって、撮影が数日後になる検査もあります。投与された放射性医薬品からはガンマ線が放出され、それをカメラで画像化します。ガンマ線は、CT検査や胸部X線検査で使用されるエックス線と似たようなものです。「核医学」という名前で、恐いイメージを持ってしまう方もいるかもしれませんが、CTと比較して、被ばくは同程度であり、薬品による副作用も極めて少ない安全な検査です。
 核医学検査は、使用する放射性医薬品の種類により、従来のシンチグラフィー検査と、比較的最近行われるようになったPET検査に分けられます。

従来のシンチグラフィー検査

この検査ではガンマ線を放射する放射性医薬品を用います。シンチグラフィーとは、体内に分布した薬品が放出するガンマ線を画像にする検査の総称で、CTやMRIよりも歴史があります。投与されるれる放射性医薬品は非常に少量であり、副作用は極めて稀です。用途に応じて異なる薬品を用いて、脳や肺、心臓、腎臓、骨など様々な臓器の代謝・機能を反映した画像が得られます。薬品によって撮影のタイミング、回数が異なり、撮影が数日後になる検査もあります。いくつかのシンチグラフィーの結果を合わせて得られる情報もあります。
2枚の板で挟むような状態で検査が行われます。人によっては圧迫感を感じる人もいます。写真で確認してみてください。脳の検査の場合は目隠しをしながら検査をすることもあります。

PET検査

 PETはpositron emission tomographyの略で、PETでは従来のシンチグラフィとは異なる放射性医薬品を用います。当院では被曝を抑えたCTを連続して撮像します。
 通常の診療ではPET検査の大部分はブドウ糖に類似した製剤である、18F-fluorodeoxyglucose (FDG)を使用して検査を行い、副作用は極めて稀です。FDGは悪性腫瘍、心疾患、てんかん、血管炎の評価に保険適応となっており、それらの評価に用いられています。
 当院では最新の半導体検出器を用いた高解像のPET/CT装置も稼働しています。この半導体PET/CTでは、通常のPET/CTよりも精細な画像で全身を評価することができます(比較画像その1・その2)。図の右側の画像が半導体PETの画像ですが、左側の従来のPETと比較して集積の評価を詳細に行うことができます。

  • 半導体PET

  • PET比較その1

  • PET比較画像その2

FDGの特徴

 FDGは糖代謝を反映する放射性薬剤で、てんかん、悪性腫瘍、心疾患 (心サルコイドーシス、心臓の生存性評価)、大血管炎の評価に保険適用があります。
 悪性腫瘍は通常の組織よりもブドウ糖を多く消費するため、FDGが多く取り込まれ、画像で評価することができます。また、炎症がある領域でも糖の代謝が亢進するため、炎症性疾患である心サルコイドーシスや血管炎の評価にも使われています。脳は生理的に多くの糖を必要とする臓器です。てんかんの原因となる病変の糖代謝は低いことが多く、FDG集積が低い部位に病気があることがわかります。
 また、ブドウ糖に似たFDGは血糖値や食事によるインスリン分泌によって大きく影響を受けてしまうため注意が必要です。食事を取った状態や高血糖の状態では十分な結果が得られず、患者様の不利益となってしまいます。詳しくは「検査の注意点」をご覧ください。

検査の注意点

 FDG を使うPETでは検査前の絶食が必要です。当院では検査の6時間前からの絶食をお願いしています(なお、「心サルコイドーシス」を対象とした検査の場合は16時間以上前からの絶食をお願いしています)。食事 (主に炭水化物) にはブドウ糖が多量に含まれており、検査前に普通どおりに食事を摂取してしまうと、FDGが筋肉に多く集積し、病変へのFDGが集まりにくくなります。病気があってもFDGの集積が少なく、病変がわかりにくくなったり、評価できなくなったりすることがあります(画像)。
 したがって、FDG PET検査前の絶食は正確な検査を行うために非常に重要です。水やブラックコーヒー、無糖のお茶(ミルク入りはダメ)は飲んでも大丈夫です。
 ほんの少量の飴ですら検査に影響するので、誤って口にしてしまったことを申告せずに検査が行われてしまうときちんと評価ができず、患者様にとって不利益になります。誤って糖分を口にしてしまった場合、検査時間や検査日の変更で対応することが多いです。検査が延期になることで、再来院の手間はありますが、適正な検査が行えるようにご協力をお願いいたします。

※ 糖尿病治療中の方は、特別な準備 (内服薬やインスリンの調整) が必要になることが多いです。検査前にあらかじめ主治医にご確認ください。

核医学検査の放射線被ばくについて

 放射線被ばくの単位は、実際の被ばく線量である吸収線量 (グレイ) 、人体のモデルをもとに計算で求めた実効線量 (シーベルト) などがありますが、ここでは実効線量 (シーベルト) で放射線被ばくを概算します。
 我々は、日常でも様々なものから微量の放射線被ばくを受けています。宇宙、空気中、大地、食物などから日常生活でもごくわずかずつ被ばくがあり、日本人であれば年間で平均2.1ミリシーベルトの放射線被ばくがあります (世界平均で2.4ミリシーベルト) 。
 PET検査では、PETによる被ばくと、同時に行うCTによる被ばくがあります。PETでは体重に応じて投与量が変わり、投与量が多いほど被ばくが増えます。概算で約3〜6ミリシーベルトの被ばくがあります。さらに、同時に撮像する補正用のCTを加えると、全身でPETの撮像と合わせて合計6〜12ミリシーベルトの被ばくが予想されます。
 シンチグラフィー検査でも被ばくがありますが、用いられる放射性医薬品の種類や量によって大きく異なります。一般的なシンチグラフィー検査では1〜15ミリシーベルトの被ばくがあり、よく行われる骨シンチグラフィーでの被ばくは約3〜5ミリシーベルトです。
 通常のCT検査では、撮影回数や範囲、体格によって被ばくが異なります。一般的に背の高い人や体格の良い人は被ばくが多くなります。全身の単純CTを撮像した場合、10〜20ミリシーベルトの被ばくがあります。造影検査の場合には、撮像回数分だけ被ばくが増えます。
 核医学検査で使用する放射性医薬品は静脈投与などで体内に入りますが、半減期が短いものが多く、CTと比較して特別被ばくが多いというわけではありません。投与される主な放射性医薬品の物理学的な半減期は、テクネシウム製剤 (99mTc) は6時間、ヨード製剤 (123I) は13時間、FDGは110分です。さらに生物学的な半減期 (尿や便からの排泄) を考えると、実際の半減期はさらに短くなります。いずれにせよ健康被害が出るほどの被ばくではありません。

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