設立趣意書
1980年代初頭我が国で、がん(悪性腫瘍)による死亡が第一位となり、以来国策としてがん対策が推進され、画像診断学や各種治療法に大きな進展があったが、今世紀に入ってもがんによる死因が依然 トップとなって いる。一方高齢化社会を迎え、治療中並びに治療後のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を重視する風潮が主流となり、今日のがん治療の目標は早期にがんを発見し、最も有効で副作用の少ない治療法により、どの地域に おいても、個人にも社会にも負担が少なく、最良の治療が受けられるようにする事である。
独立行政法人放射線医学総合研究所においては世界に先駆け、がん治療のため核子当たり400MeVもの高エネルギー炭素−12ビームが加速可能なシンクロトロンを建設し、治療装置の開発と治療計画の高度化を はかり、ここ十年来2000件に及ぶ治療を遂行して、QOLを確保しつつ、難治性がん・再発がんを含むがん患者を治療し、更に1日から数日の治療期間で治療を終える短期治療に成功するなど輝かしい成果をあげている。
このような成果の上に立って、加速医科学、放射線計測、医用物理学、核医学、放射線腫瘍学等の研究者が一丸となって協同し、研究段階からがん治療の最先端に立つ重粒子線がん治療装置を有する、21世紀のがん治療の戦略目標に沿った施設の建設を行うことが社会の強い要望となっている。云うまでもなく治療と診断はがん治療の両輪であるが、東北大学はいち早く1980年代半ばに陽電子断層撮影装置PETによる がんの診断を開始した輝かしい業績を持ち、また、現状の放射線がん治療においても東北大学は一大拠点を 形成している。
重粒子線治療は難治性のがんに効果が高い上に、患者にとっては非常に優しい、つまり副作用の少ない治療法であるとされ、平成15年10月には高度先進医療として承認された。この重粒子によるがん治療が広く社会の知る ところとなり、多くの患者の治療法の選択対象となれば、さらに安全性を高め、治療対象を広め、治療効果を高める研究を続けながら、民間資本でこの装置を設立し維持することが可能となってきている。
このような状況を受け、ここ数年にわたり東北大学の有志とが、東北重粒子線がん治療センター(仮称)の設立を目指して活動を続け、平成15年には公開シンポジウム「がん診療の最前線」を共催し、講演をまとめて「ハイテクがん診療の最前線」という冊子を発行した。
云うまでもなくこのような多額の資金を必要とする大型の施設を早期に設立し、成功裏にその事業計画を遂行するためには、東北大学、放射線医学総合研究所などの国レベルの諸機関をはじめとして、宮城県、 仙台市などの地方公共団体並びに民間諸団体の強力な支援が不可欠であり、財団法人「東北重粒子線 がん治療普及・研究財団」がこのような支援の要となる。

 

事業概要

 1.重粒子がん治療について広く社会の理解を得るための活動として、市民参加型の
  シンポジウム、フォーラム等を企画、開催する。

 2.重粒子がん治療国際シンポジウムを開催する。

 3.重粒子がん治療の安全性を高め、治療対象を広め、治療効果を高める研究支援を行う。

 4.高度な技能を有した放射線腫瘍学の養成を行う。

 5.重粒子がん治療のための医学物理士及びコ・メディカルの養成を行う。

 6.自治体と協力して地域医療機関・施設の医師へがん治療法の普及活動を行う。

 7.知的財産の管理

 8.その他目的を達成させるための事業を行う。