留学報告
ユトレヒト大学留学記
高橋 紀善
2018年03月~2020年01月
・初めに
2018年3月下旬から2020年1月上旬までの約1年10ヶ月オランダへ留学する機会をいただきました。オランダにあるUniversity Medical Center Utrecht(UMCU)のStella Mook先生のもとで1.5 T MR-Linac(商品名:Unity)とMRI guided radiotherapyに関して学ぶ機会をいただきました。
キューケンホフ公園(オランダ)
・オランダとユトレヒト(Utrecht)について
オランダは人口1700万人ほどの国です。その中でUtrechtはオランダで4番目の人口の多い町です。ミッフィー(オランダ語でnijntje ナイチェ)の作者であるディック・ブルーナの生まれ故郷です。
・UMCUでの生活
UMCUは放射線治療機器メーカのElektaと共同でMRIによる位置合わせを可能としたMRLを開発した施設です。Unityはこれまでの放射線治療装置とは異なり、放射線治療装置であるライナックに1.5 TのMRIを合体させた最新の装置です。私が滞在していた2018年7月18日にUnityは欧州の保険適応であるCE markを取得し、臨床開始に立ち会うことができました。UMCUの放射線治療部門は放射線治療装置が12台(東北大は3台、4台目を準備中)、放射線治療専門医が23名(東北大は6名)その他レジデントの医師が11名いる大きな組織でした。Stella Mook先生はその中で上部消化管担当の放射線治療医であり、主に食道癌の治療を担当されていました。そのため、私も食道癌の研究チームに入れていただきました。UMCUの大学院生と共にMRI画像を用いた放射線治療の研究を行い、また食道癌患者に対するUnityを用いた治療がある際には見学させてもらい生活しておりました。
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Stella Mook先生と | 部屋の仲間たち |
・研究について
UMCUではMRIを放射線治療に用いた研究を多く行っております。放射線治療部門といってもほとんどのスタッフはMRIの研究を行っている方々です。私たち食道癌研究チームでは数年前に放射線治療中に毎週MRIを撮影するという研究を施行しており、その際のMRI画像を用いてさらに解析を進めていました。およそ35名の各6回のMRI画像全て食道癌病変にコンツーリングを行いました。オランダの大学院生は大学を卒業したばかりの方や数年臨床を行ってからの方、ほぼ全員が放射線治療の経験が全くない状態で大学院に入ってきます。そのため、私がコンツーリングを行い、その画像・コンツーリング情報を院生達が研究に用いるという共同研究という形で論文を作成致しました。
また、自分自身の研究として、放射線治療前のMRI画像を用いたRadiomics解析を行いました。約50名の患者における治療前のMRI画像・PET画像を用いパラメータを解析しました。結果はStella先生と現在議論の最中となっております。
・ユトレヒト・ヨーロッパでの生活
今回の留学は幸いなことに、研究大学強化促進事業「若手リーダー研究者海外派遣プログラム」より1年分の助成を頂きました。ヨーロッパは物価が高く、家賃と月々の健康保険代が日本にいる際よりも高かったのですが、助成金のおかげでなんとか生活することができました。日本にいた頃よりも時間には余裕があり、街を散歩したり、首都のアムステルダムまで電車で行ったりと過ごすことができました。運が良くコロナウイルスが流行する前でしたので、週末や長期休暇にはヨーロッパを旅行することができ、大変良い時間を過ごすことができました。
最後に
この度は日常診療で忙しい中、約2年の留学を許してくださった神宮教授、また同僚の皆様に心から感謝申し上げます。
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早朝のマッターホルン(スイス) | ダイヤモンドビーチ(アイスランド) |