門脈腫瘍塞栓によるHCCの治療法には限界があり、議論の余地がある。さらに、予後は非常に不良である。門脈腫瘍塞栓を伴うHCCの治療において陽子線治療が果たす役割を過去に遡り検討することにした。
門脈本幹や重要な枝に腫瘍塞栓を伴う12名のHCC、cT3-4N0M0が陽子線で治療された。患者の年齢は42-80歳(平均62歳)で、腫瘍の最大径は40-110mm(平均60mm)であった。総線量は50-72Gy(平均55Gy)/10-22分割で門脈腫瘍塞栓を含み腫瘍に照射した。
陽子線で治療した全ての腫瘍が、平均観察期間2.3年間(0.3-7.3年間)制御されていた。陽子線治療後0.1年-2.4年の間に12例の内10例に照射されていない部位に腫瘍が出現し、その中の3例には遠隔転移も認めた。その結果、8例ががんで亡くなったが、2例はさらなる治療で救済された。
残る2例は陽子線治療後4.3年と6.4年が経った今、病気の痕跡もなく生存している。門脈腫瘍塞栓を有するHCC患者の無増悪生存率はそれぞれ2年67%、5年で24%であった。平均無増悪生存率は、2.3年であった。grade3もしくはそれ以上の毒性は認めていない。
門脈腫瘍塞栓を有するHCC患者の陽子線治療は妥当で、効果的である。患者の生存率と局所制御率を有意に改善したと考えられる。
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