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甲状腺ヨード内服照射

甲状腺I-131内用療法

 放射線治療には外照射の他に、体の内部から病変に放射線(主にβ線)を照射する内照射というものがあります。甲状腺分化癌(主に乳頭癌や濾胞癌)に対して行われるI-131内用療法は最も広く行われ、かつ歴史のある治療法です。当院ではこれまで800症例に及ぶ治療を行っています。

 正常な甲状腺は一般にI(ヨウ素)を取り込む性質を有しています。正常組織よりは弱いながら、甲状腺癌のうち甲状腺分化癌にはこのヨウ素を取り込むという甲状腺本来の性質を有している場合が多く認められます。そこで放射線を放出するヨウ素(I-131)のカプセル(図1)を内服することによりI-131が病変内に取り込まれ、かつここから放出される放射線(β線)がそれほど遠くまで飛んで行かない特徴を有している(体内飛程約2mm)ことから、病変部に集中して放射線を照射することができるのです。

 上記のようにI-131内用療法は甲状腺や甲状腺分化癌及びその転移巣がヨウ素を取り込む性質を利用しての治療法です。ただし、本来の甲状腺が残存している状態ではI-131は残存する正常甲状腺組織にほとんどが取り込まれてしまいます。そのため病変部にはI-131が十分に入らないということになります。つまりこの治療を受けるためには正常甲状腺をすべて摘出していることが前提となります。

 転移がある場合はI-131内服前の準備(約6週程必要です)の後、RI病棟(図2)に入院しての治療が原則です。内服するカプセルは放射線をだします。β線の他に遠くまで飛んでいく性質のあるγ線も混ざっています。そのため内服された患者様から第3者への被ばくの問題が生じることになります。RI病棟とはそのための対策を施している病棟です。ただこのRI病棟は全国的に数が少なく、I-131内用療法を行える施設も数が少ないことになります。当院ではRI病棟内にI-131内用療法用の病室を6室有し、月に8名の入院治療を行っておりますが、日本全体として需要に対して、治療設備や専門医が少ないことなどで、全く追いついていないのが現状です。そのため状況によっては半年以上の待機期間となることがあります。
I-131治療を行うための準備とは、まずI-131投与の6週間前から甲状腺ホルモン剤のチラーヂンSを休薬していただきます。代わりにチロナミンという別種の甲状腺ホルモンホルモン剤を内服いただきます。このチロナミンもI-131投与の2週間前からは休止していただきます。次にI-131投与の1週間前からヨード制限食としていただき、体内の残存ヨウ素を極限まで下げていただきます。そうすることにより放射性ヨウ素を効率よく病巣に集積させることができることになります。そして投与の前週金曜日に入院、月曜日に投与となります。その後同週の木曜日に体表1mのところでの放射線量を測定し、基準以下に減衰しているようであれば隔離解除となります。十分に減衰していない場合は隔離が2〜3日延期となることもあります。概ね入院は1週間となります。

この治療の副作用として、大きく2つに分かれます。

a) 甲状腺ホルモン剤の休薬に伴う甲状腺機能低下によるもの
全身倦怠感やむくみ、寒がり、頭痛や肩凝りの増強、活動性や集中力の低下が見られる。重篤な場合は血圧低下や意識障害をきたすこともあります。このような場合はただちに甲状腺ホルモンの補充を開始します。降圧剤やインスリンの使用量の変更が必要となることもあります。

b) 放射線障害によるもの
@唾液腺障害 耳下腺や顎下腺の腫脹と疼痛が投与翌日〜数日以内に認められます。また味覚障害がくる場合もあります。当院では予防として梅干を食べてもらうようにしています。

A消化管障害 嘔気や食欲低下を来たす場合もあります。当院では予防的に吐き気止めを内服してもらっています。

B骨髄障害 一過性の造血機能低下が起こり、治療後4〜8週にピークとなり、12週までに回復する。

C不妊 男性・女性ともにI-131療法後しばらくは不妊になると言われていますが、ガイドライン上少なくとも半年間は妊娠や授乳は避け、避妊するようにしてください。

D肺線維症 粟粒性の肺病変がある方がこの治療をある一定の回数以上行った場合にこの病態となる場合があります。

E二次発がん この治療を10回以上行うと膀胱癌(I-131が尿として排泄されるため)等の二次発がんの危険性がありますので注意が必要です。

 

東北大学病院 放射線治療科
図1:I-131カプセル
 
東北大学病院 放射線治療科
図2:I-131内服照射用の隔離病室

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