I:非ホジキンリンパ腫
頭頸部原発のものは、すべての症例でshellを作成する。作成法は頭頸部共通事項参照。
照射野の決定法
GTV:治療開始前にX線CT、US、MRI理学的所見を参考にして決める。
CTV:
1)節性
○腫瘍の存在するリンパ節領域(修正Kaplanのリンパ節領域定義:図1)。
○2リンパ節領域以上にまたがる病変の場合は、複数のリンパ節領域:図2-Bなど。
○リンパ節領域の境界から2cm以内に位置する病変の場合は、隣接するリンパ 節領域も含む。
(腋窩リンパ節病巣の場合、患側の鎖骨上窩リンパ節領域はCTVに含める図2-C)
2)節外性
○浸潤臓器全体のみを照射:眼窩、鼻腔、副鼻腔、骨、硬膜外、肝
○浸潤臓器全体と隣接するリンパ節領域:
ワルダイエル輪、口腔、唾液腺 + 中頸部リンパ節領域(ワルダイエル輪
は鎖骨上窩リンパ節まで:図2-@)
甲状腺、喉頭 + 全頸部(〜鎖骨上窩)リンパ節領域:図2-E
子宮、卵巣、膀胱、尿管、前立腺 + 全骨盤リンパ節領域:図2-F-(iii)
乳腺 + 腋窩リンパ節領域:図2-C
肺、気管 + 縦隔リンパ節領域:図2-D
(大動脈弓より頭側の上縦隔リンパ節病変の場合、両鎖骨上窩リンパ節領域 はCTVに含める)
PTV:CTVから、呼吸性移動や患者固定の再現性誤差などを考慮し設定する。
病期、組織、部位別治療方針
1.Stage I,II Low grade lymphoma(B-cell).
Working FormulationによるLow grade lymphomaないしREAL分類に基づくNHLのclinical grouping ではindolent lymphoma(主にExtranodal marginal zone lymphoma(MALT lymphoma),Nodal Lymphomaとしてのmarginal zone lymphoma, follicular lymphoma, Mantle cell lymphomaなど) はInvolvedで放射線単独治療で30〜36Gyの照射を行う。
2.StageI non-Bulky Intermediate grade lymphoma
(Bulky massとはCotswolds修正分類では最大径10cm以上のものをいう。)
1)頭頸部以外のすべての領域での基本的な治療方針は、CHOP3コース+involved field 40(〜50)Gy(原則としてCHOP先行のこと)
2)頭頸部
(頭頸部では10cm以上はほとんどないが、やはりtumor sizeが予後因子であることには変わりなく、とりあえずCTにて最大直径3cm以上をbulky massとする。)
2)-1
頭頸部non-bulkyでは放射線療法単独でも治癒可能の病態があると思われる。(甲状腺内の限局性病変、扁桃のnon-bulky病変、副鼻腔内に限局した孤立性病変、片側眼窩の結膜に限局した微小病変など):原則としてinvolved fieldで40(〜50)Gy(副鼻腔は50Gy)、扁桃はワルダイエル輪全体と全頸部(図2-@)、眼窩結膜はPbコンタクトを用い電子線照射。(このカテゴリーの症例でもCHOP3コースの併用は可とする。このカテゴリーに含まれる症例のみでのランダムトライアルはない。)
2)-2
2)-1以外の頭頸部原発non-bulkyでは節外性、節性に拘わらずCHOP3コース+involved field 36Gyを標準治療とする。(鼻腔原発のT/NKは50〜56Gy)。照射野はワルダイエル輪原発、節性は図2-@とする。
3. StageI頭頸部 Intermediate grade lymphoma Bulky mass(3cm〜6cm), StageII Intermediate grade lymphoma
CHOP3(〜6)コース+Involved Field 36Gy+CHOP3コース。CRになったと してもbulky massのあった部位にInvolved Fieldで照射30Gy、CHOPは照射前に 6コース行うか、サンドイッチ式に3コース+3コースとする。)
4.StageI 頭頸部 high grade あるいは intermediate grade でbulky mass (6cm〜), StageII Intermediate grade lymphoma with bulky mass(6cm〜).
III,IV期に準じた治療を行う。最低CHOP8コースないし第3世代の化学療法 +Invelved fieldで30Gy。
5.特殊型
○Mycosis Fungoides:全身電子線照射を行う。前後の2fields (or 6fields technique)(20Gy)+local boost(10Gy)
○胃MALTリンパ腫:まず除菌を試みる。照射は胃全体に30Gy/15frとする。
○脳原発リンパ腫:全脳30Gy+局所20〜26Gy化学療法はMTX髄注を併用したものにするが、標準的なものはまだない。
図1.リンパ領域シェーマ
図2.放射線治療照射野シェーマ @-a @-b
(Lymph node regions for @
Involved field placement)
A B
C
D
E
F(腹部領域の各種Involved field)
(i) (ii) (iii)
II:ホジキンリンパ腫
1.予後不良因子*のないI,II期ホジキンリンパ腫
放射線単独:マントル照射+脾臓、腹腔動脈周囲リンパ節、腹部膨大動脈周囲リンパ節を含む上腹部照射野(図3)
線量マントル照射30Gy/20分割→上腹部30Gy/20分割+初発部位の追加照射10〜20Gy/5〜10分割
◎鼠径部リンパ節など下半身原発の場合は脾臓を含む逆Y字型照射野とする。
◎上頸部リンパ節に病変がある場合は左右2門照射でワルダイエル輪を入れる(図2:@-b)。
2.予後不良因子を有するI,II期ホジキンリンパ腫
◎放射線治療後に化学療法を併用すること。
放射線療法:1.と同様とする。
化学療法:C-MOPPかABVDを行う。前者では男女不妊症、2次発癌、後者では肺線維症の発症に注意しなければならない。当科ではC-MOPP/ABVD交代療法を行うこととする。最低2コース(1コースはC-MOPP1コース+ABVD1コース)、できれば3コース行う。
*予後不良因子
1)B症状(寝汗、体重減少、発熱)
2)組織型でLD(リンパ球減少型)
3)縦隔に大きな腫瘤がある(腫瘤/胸郭比が1/3以上)
4)頸部に大きな腫瘤がある(直径が6cm以上)
5)3カ所以上のリンパ節領域に腫瘤がある。
6)年齢が40歳以上
7)血沈の1時間値が40mm以上
◎マントル照射野の決め方。
1.ジマトロンで胸部写真を撮り、その写真上に手書きでブロックする部分を書き入れる。その際、体厚の1/2の位置にサイドポインターを設定し、写真を撮ったときのセンターとサイドポインターを体表面に書くことを忘れないこと。
2.CAD PLANのDRR像に30x40程度(患者によって異なる)の大fieldを設定し、ブロックを書き入れる。(それをもとに技師さんは、大fieldを両肩と縦隔の3つの部分に分け、ブロックをMLCによって作成し、大fieldの一つのアイソセンターで3分割して照射してくれます。)
(2.がbetterです。)
図3 マントル照射と横隔膜下の照射の実際
(癌放射線療法95;p844より)