切除可能胸部食道癌に対する放射線、
シスプラチン、5-FUの同時併用療法。
Ver _020318.doc
(最終更新2001年 月 日)
1. 研究課題名
切除可能胸部食道癌に対する放射線、
シスプラチン、5-FUの同時併用療法。
2. 研究組織
東北大学医学部附属病院 移植再建内視鏡外科
東北大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科
東北大学医学部附属病院 放射線治療科
東北大学医学部附属病院 腫瘍内科
東北大学医学部附属病院 加齢核医学科
3 研究の目的
1)手術可能胸部食道癌症例に対しての放射線化学療法の有効性に関して前向きに信頼性の高いデータを得る。
2)手術可能胸部食道癌の治療として,放射線化学療法を第1選択とし、手術治療を第2選択とすることの妥当性を検討する.
メモ:腫瘍内科の吉岡先生の提案もあり、上記2)を付け加えました(菅原)
4 適格条件、除外条件
4.1 適格条件
4.1.1 組織診断において扁平上皮癌と診断された胸部食道癌の症例
4.1.2
1997年UICC TNM分類においてI-III期
T1b〜T3(m癌は除外する。T4で明らかに切除不能な症例は除外する)
any N(但し、Long-T照射野に含まれない胃周囲リンパ節転移のある症例(No.4, 5, 6の転移陽性例)は除く)
M0 4.1.3 初回治療例
4.1.4 年齢20歳以上80歳未満の症例
4.1.5 Performance Status:0−1の症例
4.1.6 適切な主要臓器機能を保持している症例
白血球:3、000/mm3以上、
ヘモグロビン:10 g/dl以上
血小板:100,000 /mm3以上、
GOT、GPT: 施設基準値上限の2倍以下
(東北大だと、GOT<60, GPT<70 とゆうことになる)
総ビリルビン:1.5mg/dl未満、
クレアチニン:1.2mg/dl以下、
クレアチニンクリアランス:50 ml/min以上、
PaO2:70mmHg以上
心電図:重篤な変化を認めない
4.1.7 評価可能病変を有する症例
4.1.8 文書による患者本人の同意が得られる症例
4.1.9 他臓器の癌の化学療法歴、放射線療法歴のない症例
4.2 除外条件
4.2.1 活動性重複癌のある症例
4.2.2 重篤な合併症を有する症例
重篤な心疾患やコントロ−ル不良の狭心症、 6ヵ月以内の心筋梗塞、 肝硬変症例、 コントロ−ル困難な感染症、コントロ−ル困難な糖尿病 その他治療の施行に重篤な支障を来すと判断される合併症を有する症例
4.2.3 妊娠中あるいは授乳中の女性
4.2.4 その他、担当医が本研究の対象に不適当と判断した症例
5 説明及び同意について
患者の同意本治療の開始時、および本研究実施前に、試験担当医師は下記(1)〜(6)の内容について 患者に十分説明し、自由意志による本治療参加の同意を文書にて得る。
病気についての説明(病名・病期の告知を原則とする)
(1) 放射線治療と抗癌剤について
(2) 予想される効果および副作用について
(3) 当該疾患に対する他の治療法の有無(特に外科治療について)およびその内容について
(4) 本治療への参加に同意しない場合であっても不利益を受けないこと
(5) 本治療への参加に同意した場合でも随時これを撤回できること
(6) その他、患者の人権の保護に関し必要な事項
6 症例の登録
6.1 適格条件に合致した症例について、試験開始前に適格性を確認した上登録を行う。
6.2 登録・統計センター:治療計画室 Tel: 022-717-7437
7 試験の種類
臨床第II相試験
8 治療の内容
8.1概要
CDDP 40mg/m2
day1, 8 に点滴静注
5-FU 400mg/m2
day1-5, 8-12 に持続点滴静注
放射線療法 2Gy /
dayをday1-5, 8-12, 15-19の計30Gy照射
以上を5週間を1セットとして2セット(照射総量60Gy)行う。
以上の療法で全くの不変例(non-CR/non-PDの一部)と増悪(PD)した症例では、本治療法を中止して、他の治療法(まず外科療法を考慮する)への変更を図る。
以上の治療で僅かでも効果の得られた症例(CR, non-CR/non-PDの一部)に対しては、さらに以下の化学療法を追加する。
CDDP 80mg/m2
day1
5-FU 800mg/m2
day1-5
これを4週間を1セットとして、2セット行う。
追加化学療法2セット後の時点(18週目の評価)でCRが得られた症例では原則として無治療で経過観察を行う。
CRが得られず、癌の遺残が組織学的または画像・臨床診断的に明かな症例では他の治療法の追加を考慮する。この際には外科療法を第一選択とする。
なお、各治療セット終了時(5、10、14、18週目)に内視鏡、CTなどによる評価を行い、増悪(PD)症例では本治療法を中止して、他の治療法(外科療法を第一選択とする)への変更を図る。
8.1 放射線治療 メモ:照射野の規定、照射量の規定(60+20)、などの記載を、根本先生に御願いします(菅原)
外照射単独治療とし腔内照射は併用しない。放射線治療(外照射)は10または15MVのX線(原則として前後対向2門)を用いる。40Gyまでの照射野は原発巣、肉眼的に明らかな腫大リンパ節、両側鎖骨上窩、食道全体、腹腔動脈起始部(Utは除く)を含めることとする。40Gy以降は、食道原発巣と、治療前に画像診断(CTでのリンパ節転移診断については、項目12.1参照)や触診にて明らかであったリンパ節転移病変に絞って照射を行う。原発巣の上下3cmのマージンをとることとする。線量評価点は対向2門では体厚中心、その他ではPTV中心とする。
8.2 化学療法
CDDP 40mg/m2 day1, 8
5-FU 400mg/m2 day1-5, 8-12
CDDP投与日には、3000mL/day以上の輸液量を投与する。
5-Fuは、24時間の持続投与とする
※放射線化学同時療法
放射線化学療法における治療開始日(day1)は、月曜日または火曜日とし、照射は化学療法開始日と同じday1から開始し、土曜日,日曜日,祝日を除く平日に行う。
化学療法は連続5日間の単位で行うので、途中に土曜日、祝日があっても施行する。
火曜日スタート(day1が火曜日)であっても、2週目の化学療法開始日は月曜日(day7)とする。
可及的に、照射と化学療法(特にCDDP)が同日に行われるようにする。
8.3 追加化学療法
放射線化学療法終了でわずかでも効果の得られた症例(CR,non-CR/non-PDの一部)に対して、以下の2コースの化学療法を追加施行する。
CDDP 80mg/m2 day1
5-FU 800mg/m2 day1-5
これを1コースとして、4週間を1コースとして2コース行う。
8.3 治療の中止、延期基準 開始、延期、中止基準一覧(休止が長くなっても可能な限り再開し治療を行う)
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各コースの開始 休止後の再開 |
休止、延期 |
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中止(脱落) |
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推奨検査頻度 |
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化学療法 |
放射線 |
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PS |
PS0-1 |
PS3 |
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PS4 |
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毎日 |
WBC |
2500以上 (登録は3000以上) |
2500未満 |
1500未満 |
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週2回 |
血小板 |
7.5万以上 (登録は10万以上) |
50000未満 |
25000未満 |
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週2回 |
Hb |
10以上 |
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週2回 |
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総ビリルビン |
1.5未満 |
2以上 |
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3以上 |
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週2回 |
ECG |
重篤障害なし |
重篤な心疾患の発症 |
重篤な心疾患の発症 |
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CCr |
50以上 |
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各コース開始前に実施 |
Cre |
1.2以下 |
1.5以上 |
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2.0以上 |
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週2回 |
発熱 |
37.5 |
38以上で腫瘍熱が否定的 |
38以上で腫瘍熱が否定的 |
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毎日 |
食道炎 |
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モルヒネ量90mg/日以上で制御困難な疼痛。瘻孔形成時にも可能な限り継続。 |
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問診は毎日 |
悪心嘔吐 |
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制吐剤で制御困難な頻回の嘔吐 |
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制吐剤で制御困難な頻回の嘔吐 |
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毎日 |
感染症の発症 |
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肺炎 |
照射の継続の危険性が少ないと考えられる場合は継続。 |
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毎日 |
放射性肺臓炎 |
肺臓炎の可能性なしと診断。 |
肺臓炎を疑う明らかな臨床症状や検査所見がある場合。 |
肺臓炎を疑う明らかな臨床症状や検査所見がある場合。 |
放射性肺炎の診断確定時 |
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週に一度は胸部X線 |
WBC, PLTによるプロトコル中止(脱落)の規定は、「休止期間が長すぎる場合は不適格例とする」規定があるので、不用と思いますが,、‐‐‐‐‐‐‐菅原.
8.4 その他のプロトコル治療の中止基準
8.4.1 明らかな病変の進行、新病変の出現
8.4.2 患者の拒否または同意の撤回
8.4.3 重篤な有害事象の出現により治療の継続が困難と判断される場合
8.4.4 その他担当医師が治療継続困難と判断した場合
8.4.5 抗がん剤を減量(項目8.5参照)しても、減量に相当するレベルの毒性が出現した場合
8.4.6
各コース中連続した21日以上の照射休止期間があった場合
8.4.7
予定の2週間の休止期間は最大4週間まで、3週間の休止期間は最大5週間まで、延長を認め、それ以上の休止が必要であった場合
8.5 抗がん剤投与減量に関する規定
8.5.1 各治療コースにおいて、以下の基準に抵触する毒性が出現した場合、次のコースからの抗がん剤を減量して投与する。
WBC 1000未満 次コースから5Fu,CDDPともに25%減量。
plt 25000未満 次コースから5Fu,CDDPともに25%減量。
メモ:腫瘍内科の吉岡先生から、“抗がん剤分野のstudyでよくみるのは、25%減量”とのことでした。(菅原)
Cre 1.5以上 次コースからCDDPのみ中止.
8.5.2 減量後にも上記毒性が出現した場合には, プロトコル終了し、脱落例として扱う。
9 有害事象に対する対策
有害事象の出現に際しては、抗生剤投与、輸血などを含む最大限の対症療法を行う。Grade 3以上の白血球減少または好中球減少を認めた場合は、必要に応じ安全のためG-CSFなどの白血球増多剤の投与を行う。G-CSFを投与しながらの抗がん剤継続は行わない(放射線治療は可とする。)。制吐剤および粘膜保護剤の投与は予防的投与を含めて自由とする。
10 後治療
原則として(患者の希望により治療方針が変更となった場合、などは除く)プロトコール完了した症例(CRにいたった症例)は明らかな再発まで、外科切除を含め、癌に対する治療は行ってはならない。
再発症例、治療中止例に対する後治療としては、まず外科療法を考慮することとする。
化学療法が主因の毒性により治療中止となった場合、放射線治療は予定線量まで施行することが望ましい。
11 検査項目
11.1 病期分類は登録前に行う。
11.1.1 病期分類の方法
視診、触診、バリウム造影検査(最低正面、側面、第1、第2斜位を含む)、内視鏡などの他に、胸部X線、頸部〜腹部CT、腹部超音波検査。
(その他の望ましい検査)胸部MRI、気管支鏡、全身骨シンチ、脳CT(MRI)、超音波内視鏡。
11.2 一般検査
11.2.1 臨床所見の観察項目:PS、最高体温、血圧、尿量、感染症の有無
11.2.2 観察時期:随時(週1回以上)
11.2.3 末梢血液検査
11.2.3.1 項目:白血球数、白血球分画、赤血球数、網状赤血球、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、血小板数
11.2.3.2 検査時期:週1回以上
11.2.4 血液生化学検査
11.2.4.1 項目:総タンパク、アルブミン、総コレステロ-ル、GOT、GPT、ALP、LDH、クレアチニン、総ビリルビン、直接ビリルビン、BUN、K、Na、Cl、Ca、CRP
11.2.4.2 検査時期:週1回以上
11.2.5 腫瘍マーカー
11.2.5.1 項目:scc抗原
11.2.5.2 検査時期:1ヶ月に1回
11.2.6 肺機能:動脈血酸素分圧
11.2.6.1 検査時期:呼吸器症状出現時
12 効果判定の評価項目
12.1 CR率、奏効率
12.1.1.食道腫瘍縮小効果は、内視鏡で判定する。
判定:CR 下記の1)2)ともに満たされた場合。
1)GTFで全食道が観察できる条件下で(狭窄によるファイバー不通過例は不可)、治療前の腫瘤性・潰瘍性病変が消失し、新たな病変の出現を認めない(平坦なびらん、白苔、瘢痕、軽度の狭窄、ヨード不染、生検陰性の小隆起はCR判定の妨げとはならない)
2)病変部位の生検標本の組織学的検索で、がん細胞を認めない。
PD: 原発巣の増大、もしくは新病変が出現した場合。いったん腫瘍が消失した後の再出現を含む.
nonCR/nonPD: CRでもPDでもない場合。
NE: 判定不能。なんらかの理由で検査が行えない場合。 12.1.2 リンパ節転移の縮小効果は、冠状断CTの2方向測定病変で、短径1.0cm以上のものを評価可能病変(3箇所以内)として、、WHO判定基準にしたがって判定する。
12.2放射線化学療法の完遂率
各コース中連続した21日以上の照射休止期間があった症例は不適格例とする(原則治療は再開継続)。予定されていた2週間の休止期間は最大4週間まで、3週間の休止期間は最大5週間まで、延長を認め、それ以上の休止が必要であった場合には脱落例とする。
12.2 非再発生存率
Kaplan-Meier法
12.3 累積生存率
Kaplan-Meier法
12.4 原病生存率
Kaplan-Meier法
13 安全性評価の基準
有害事象の評価はNIH CTC ver2ならびにRTOG(NIH CTC ver 2.0が国際的でしょうか)の基準を用いる。CTCでは食道炎の記載がpoorの様に思いますが、、、痛みを参考に記載などかなり曖昧になっています。(根本)
14 中間及び最終解析の時期、方法
14.1 解析は症例集積開始の2年後より行い、最終解析は5年後に行なう。
15 解析の内容と方法
登録症例数、適格性と背景因子、治療完遂率、各段階での有害事象と照射線量、腫瘍縮小効果、効果持続期間、再発形式、生存期間について解析する。解析は全適格例を対象とする。効果持続期間、生存期間は治療開始日を起点とし、それぞれ初再発日、死亡日を終点として算定する。
16 症例数と集積期間
16.1 症例数
Simons two stage desige(minimax desige)を用い、本療法の期待奏効率を80%、閾値奏効率60%、αエラ−=0.05%、βエラ−=0.20に設定すると必要症例数は35例となる。
期待奏効率を3年生存率と読み替えて、Simons
two stage desige(minimax desige)を用いてもよいものでしょうか?
当科の切除後3年生存率(非治癒切除例を含む)が、約54%くらいなので、
期待3生率を50%、閾値3生率30%、αエラ−=0.05%、βエラ−=0.20に設定すると必要症例数は39例
集積期間
2年
17 追跡方法、期間
治療終了後も再発のみならず晩発性の有害事象に注意し症例の観察を行う。観察期間は1年目:1ヶ月に1回以上、2年目:2カ月に1回以上、以後適宜とする。内視鏡、CTなどのfollw up検査は、治療開始6ヶ月目から24ヶ月目までは3ヶ月毎に行う。晩期の有害事象とは放射線治療開始後90日以降より出現したものとし、治療終了後可能な限り経過観察を行うものとする。患者の都合で来院できない場合には電話での問い合わせにて対処する。